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「スッスッハッハ!」が最終的に「我修院」になった思い出

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先日、Amazonプライムで「バチェロレッテ」という番組を観ました。

主役の女性がとっても綺麗なんです。凛として美しく、品がよく、セクシーだけれど、筋肉がしっかりついていて、いやらしくなく健康的。その彼女が番組中に「毎日10キロは走ってる」みたいなことをおっしゃっていて、そうか…毎日走るとこんなに綺麗になるのか!わたしも走ってみようかな…なんて、考えたりしています。

とはいえ、わたしはマラソンが超苦手。

すぐ疲れてしまうので、もう全っ然、走りたくない。
ちょっとそこまでとか、たった数百メートル走っただけで、もう死ぬんじゃないかってくらいゼェゼェハァハァしてしまいます。

こうやって数ヶ月に一度、何かに感化されて「走ろうかな」と思い立つものの、走り出すと「意味がわからない。なんで走らないといけないのか。健康のためならもっと他にもあんじゃん。マラソンなんて、数あるスポーツの中でも一番苦しいのに。どうしてわざわざ辛い辛い言いながら走り続けるのか?ほら、辛いならもう、すぐそこで止まればいいじゃん?あかん、もう止まろ」と、怠惰の塊でしかないもう一人のわたしがすぐ出てきて、足を止めてしまいます。

そして、そのたびに思い出すのが、マラソンの呼吸法のスッスッハッハッ。

子供の頃から苦手でした。マラソン。
毎年、冬がくると、来たるマラソンの日々が憂鬱でたまらない日々を過ごしていました。

なんとか休めないかと、なるべくお腹を出して寝たり、咳をしている子の近くへ行って風邪菌まんさいであろう空気を積極的に吸ってみたり、頑張って風邪をひく努力をしましたが、そんな時に限ってなかなかうまくいきません。

どうしようもないのでしぶしぶ毎年走るわけです。しかし、どうせ走るなら少しでも楽に。どうせ走るなら少しでも良い順位で、とも思います。そこで出会ったのが、呼吸法。

きっと皆様もご存知かと思います。
ランニングが楽になる呼吸法「スッスッハー」または「スッスッハッハッ」です。

2回連続して吸うことで、酸素を効率よく取り込めるから、普通に呼吸するよりも楽なんだそうです。

忘れもしない、小学4年生の冬でした。

もちろん憂鬱は憂鬱でした。が、その年の私は一味違いました。なんてったって、楽に走れるというスペシャルな呼吸法を知ったんだから。

学校では、マラソン大会を控えての数週間、毎朝、授業の前に走る期間がありました。毎朝のマラソンで、少しずつスッスッハッハを試し、ついには完全にその呼吸法を自分のものにし、本番を迎えることができました。

よーい、どん!

さぁ、始まりました。マラソン大会。
序盤から惜しみなく使っていくスッスッハッハッ。

スッスッハッハッ。スッスッハッハッ。たったったった…
やはり、いける。今年は上位を狙える。

どんどん走ります。足並みもスッスッハッハッと同じリズム。軽い軽い。とてもいいかんじ。

これまでの長年のどん底マラソン人生が頭をよぎります。散々ツラく苦しい思いをしたあげく、いつもビリから5番くらい。完全な負け組だったわたし。よーし、今日こそは!

なんて調子に乗ってると、ちょっと疲れてきます。
しかしまだまだ大丈夫。だってこの呼吸法なんだから。
スッスッハッハッ。

ん?あれ?
なんだ?
「スッスッハッハッ!スッスッハッハッ!」
あれ?
こころの中でとなえているはずのスッスッハッハッがめちゃハッキリ聞こえる…  

「スッスッハッハッ!スッスッハッハッ!」

わたしのじゃない!隣の子だっ!
隣の子とリズムがピッタリ合っちゃってる!

隣の子のスッスッハッハッが、めちゃでかい。
割ともう声に近い大きさ。声に出ちゃってる。心配になってくる…

スタミナは大丈夫なんだろうか?声に出すなんて、疲れるんじゃないだろうか?

スッスッハッハッ!
たったったったっ!

走るリズムもめちゃめちゃわたしのそれと完全にシンクロしてる。全然仲良い子でもなんでもないのに足並み揃いすぎちゃってる。
よく見かける、スタート前の「一緒に走ろうね」のやつを全く知らない子としちゃってる。

隣の子の様子がおかしい。
こっちを気にしてる…

やはり向こうも気付いた。

…ですよね?

わたしたち…しちゃってますよね?シンクロ。

いつまで経ってもまったく一緒すぎて、だんだん気まずくなってきた、、

こうなったら、ずらすしかない。少し無茶な作戦にはなるが、このままゴールまでシンクロスッスッハッハッはきつい。彼女と離れるため、グッとペースをあげる。

うまく離れられたものの、やはり随分と疲れてきた。

もしかしたら、スッスッハッハッよりスッスッハーのが楽かな?

スッスッハーに変えてみよう…

スッスッハー
えっ?あれぇ?

右足が!合わない!

スッスッハー?

ハーッ!?なんだこれっ!だめだ!

スッスッハッハッで足なみと呼吸が合ってる事に慣れすぎて、スッスッハーするとハーのとき右足が、うう、うん…と、リズムを持て余して空中を彷徨っちゃう。

右っ!左っ!右?…右…?みぎが2ーー!これはケンケン!
マラソン大会中、ちょいちょいケンケンしてるっておかしすぎるでしょ。1人だけ競技違う人混ざっちゃってる。

スッスッハー!
たったっ、ケンケンッ!

どうしても呼吸に足がそろってしまう。もうスッスッハッハッでしか走れない体になってしまっている。
これはだめだ、スッスッハッハッに至急戻そう…。

パニックの中、なんとかリズムを取り戻したものの、スッスッハーで完全にペースが乱れた。そのせいで、いつのまにか随分と遅くなり、何やら聞き覚えのある声が…
「スッスッハッハッ!」

さっきのシンクロ彼女だ!また並んだ。今となってはちょっと嬉しい。もう、ちょっとした戦友。こうなったらもう絶対ゴールまで一緒に走ろうね★

しかしケンケンの物理的ダメージもかなりきていて、足腰がものすごくキツい。

スッスッハッハッ。
あぁ、だめだ…限界。
もう彼女とシンクロしたくてもできていない。

苦しい、脇腹も痛くなってきた…。
スッスッハッハッが辛い。浅すぎる。

もっと吸いたい!酸素を、急募!
ズッッ!ハッハッ
ズッッ!ハッハッ
ずっと安定した効果を出し続けていたスッスッハッハッも、ここへきて限界を迎えた。

もっとたくさんの酸素を吸いたすぎるために、最初のズッ!で、めちゃくちゃ吸うように自然と変化してしまった。
ズッッ!ハッハッ
ズッッ!ハッハッ
疲労はピーク、スピードもガクッと遅くなり、どんどんぬかされていく…

さっきはあんなにシンクロしていた彼女にも、いつしか随分と距離をとられ、どんどんと前方に行ってしまった、、
あぁ、まって、
おいてかないで…、
あんたとわたしの仲じゃない…

ところであんた、お名前…なんてぇの?

みんなお揃いの体操服。藤色のハーフパンツの後ろポケットに名前が書いて縫われている。

我修院…。

がしゅういん

すごい名前だな。
どこの人?沖縄かな?が、しゅう、いん、、

ズッ!ハッハッ!たったった…
ガッ!しゅー、ぃん 
ガッ!しゅー、ぃん、たったった…

あれ?
呼吸が、
ガッ!しゅー、いん、

やだっ、いつのまにか!
ガッ!しゅー、いん、

トラックの「バックします」と同じイントネーション。
ガッ!しゅー、いん、
ガッ!しゅー、いん たったった…

いやぁー!呼吸が我修院になって戻らない!!

ガッ!しゅー、いん、
ガッ!しゅー、いん、 


ゴーーーーール… !!!

我修院でゴールしてしまった…。

ヘロヘロで朦朧とした中、先にゴールして、わたしのことを待っていた(ように見えた)我修院さんに目をやる。

ああ…おつかれ、相棒。
あんたの名前、案外いい走りさせてくれたよ…
サンキュ。


ーかくして、この日以来、マラソンをすると必ず脳裏に現れる「我修院」

ああ、バチェロレッテみたいな体になりたい。

マラソン、挑戦してみようかな。

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執筆者:


  1. みな より:

    いやぁー!呼吸が我修院になって戻らない!!
    →面白すぎるw w w いや、この記事授業中に見てたんですけど、一人でニヤついてて変態みたいになってたじゃないですか!!責任とってくださいよ!ナミさんっ!笑笑

    • パン子 より:

      授業中にwww ありがとうございます。
      笑っていただけるのが一番嬉しいです!

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こんにちは。管理人の斉藤ナミ(パン子)です。エッセイを書いています。

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