スーパーの入り口で、微妙な仲の知り合いに遭遇したら、どうしますか?
陽キャの方にはもしかしたらこの質問の意味すらわからない可能性もあるかもしれないですね。もしや「奇遇じゃん。買い物して、そのあとお茶でも行く?」とかいうのでしょうか?
っかー!ありえない。わたしにはそんなこと逆立ちしたってできません。距離のある人と他愛もない雑談をすることには相当なパワーを使うのです。
そして夕飯の買い物というのは、食材、値段、献立、値段、冷蔵庫の中身、レシピ、栄養、値段、保存方法、値段、など、あらゆることを考えながら行う、いわば戦争みたいなもんなんです。
頭をフル回転させながら、やるか、やられるかの真剣勝負(買い物)の戦いに加え、常時作り笑顔を貼り付け、中身のない雑談でむざむざと時間と精神力を溶かしていくという、MPがごっそりやられるスーパーハードな戦いを同時にこなすなんてこと、とてもじゃないけどできないのです。死んでしまうっ。
なので、ぜひ相談させてください。こういう時、どうしたらいいんですか?
けさ遭遇したのは、知り合いではあるけれど2人で会うほどは仲良くもない、うっすら友達?な感じの、ママ友ユリちゃん(仮名)です。
「ユリちゃん」と、「ちゃん」呼びになったのも最近です。みんながそう呼んでるから、わたしもどさくさに紛れて呼んでみて、この頃ようやく定着させることに成功しました。そんな距離感。
帰るときならまだしも、入り口ですから。
これからお互い買い物です。突然、後ろから声をかけられました。
世にも恐ろしい「あ!斉藤さん?」です。
地獄の始まりの合図。あ!斉藤さん。
不覚…。全く、気づけませんでした。(気づいていたら、一旦車に戻って入店タイミングをずらすか、もう別のスーパーに行く)最近はマスクなことが多いので、油断してました。
バローにおるんだで買い物に決まってますよね。てか、こんだけマスクで顔隠れてるんだから、たとえ気づいたって無視してくれたらいいじゃん。
もう逃げられない。まずは第一関門。ここからそれぞれの買い物にどう切り替えるか。
会話がひととおり終わると「それでは〜…」とか?それが正解?
お互いこれから買い物なわけで「じゃあ、またね〜」と言ったところで、向かうは同じカート置き場。カートにカゴをセットして、野菜売り場からスタートですから。しょっぱなから超難問です。
まさか「じゃあ買い物しよっか」と宣ってしまう?たまに見かける年配のおばさま達みたいにカートごと隣に並んでずっと仲良く一緒に献立の相談でもしながら?まさか!無理無理!そんなの想像するだけで息できない。はぁはぁ
「あ〜…じゃあ…ふやふやぁ〜ねー」とかなんとか。言葉にもなってない気持ち悪い何かを発して、なんとなく距離をとることに今日は成功しましたが、(成功?)
まず、この場面での正解はなんなの?誰か教えて欲しいです。
スタスタ進むユリちゃんに合わせて、わたしは用もないのにカバンの中をさばくって少し立ち止まり、タイミングをずらします。あー、買うもの書いたメモどこだっけな〜みたいな。(そんなもんカバンのどこにもない。書いたことない)
ほら、どんどんいけ!ユリちゃん!中でかち合わないように!早く行って!
十分に遅れをとって、カゴをカートにセットし、そろーりとお野菜コーナーに進む。
スマホに目をやり、視線を騙しつつ…ユリちゃんを探しながら、買い物をスタートさせます。
ユリちゃんは…?どこぞ?
え!まだ、めちゃ近くにいるじゃん!ぎゃふん!
十分に時間をとったつもりだったのに!こういう時って時間の感覚が正確に掴めない!
…まだ、視界の隅にいる。白菜もってる。
次はどっちに進むんだ?
先読みして、かち合わない方向から回らないと…
彼女の動向ばっかり気にしてるから、自分の買い物に集中できない!
ほら、全然賞味期限とか見れてないし。まんまと掴まされてる一番賞味期限の短いやつ。もうしょうがない。今日の買い物は内容は二の次です。
お野菜コーナー、お魚コーナー、お肉コーナーと、カーブに沿って一定の距離を保ちつつお買い物をしていくと…
やってきました、縦横無尽ゾーン。
平行に陳列棚がいくつも並んでるので、ここからは相手がどう動くのかもうまったく予測がつきません。
手前から効率よく順番に責めていきたいところですが、たまに戻ったりすることも否めない!
ここからが本当の勝負です。
ユリちゃんがいつ、その列からひょっこり出てくるか、もしくはわたしがひょいと角を曲がればその島の真ん中で立ち止まっているかもしれない!目があったが最後、会釈なのか、また一言二言交わすのか、なんにせよもう今日このバロー上和田店の中では、ユリちゃんの顔をみたくない。
さぁ、緊張感はMAXです。もしエンカウントしてもギリ誤魔化せるように、ちょっと俯き加減で買い物をします。
しまった…!もう縦横無尽ゾーンを抜けそうなお惣菜コーナーへ差し掛かろうとしていたところ。ここへ来て、片栗粉をどうしても取りに戻りたい!なんせ今日は唐揚げ。(お惣菜の唐揚げをみて思い出した)片栗粉がないとチキンソテーになってしまう。チキンソテーは「えー、なんで鶏もも肉あって敢えてソテーにするの?」と子供達から文句が出るのでできれば避けたい。くー!ここは危険を冒してでも片栗粉は絶対だ。
すすす…と忍者的な気持ちで、片栗粉コーナー(縦横無尽ゾーンの真ん中らへん)に戻る。
いや、こんだけゆっくり慎重に動いてたし、ユリちゃんもう今頃お会計なんじゃ?もう…大丈夫なんじゃ?
レジあたりの人影も気にしつつ、忍者歩きで片栗粉コーナーへ差し掛かると…
やべーーー!いたーー!!!片栗粉コーナーの、向こう側、お菓子コーナーでお菓子選んでる!
まだあちらの視界には入ってない!くるりとターンする。すまない子供達!今日はチキンソテーで!
もうこうなったらレジです。唐揚げがチキンソテーになるくらいなんだってんだ。唐揚げなんていつでも作ってやるがな。ここはわたしの心の平穏を優先。心が平穏でなきゃ美味しい唐揚げは作れない。きっと衣がベチャっとしちゃう。
いろんな言い訳を頭に並べつつ、強行突破的にレジへ。
そして、ここが最終関門。お菓子コーナーにいたユリちゃんが、いつ来るか分からない。お菓子って最後だもんね。そしてレジなんて完全な袋小路。
今ならレジには誰もいない。が、平日の午前中、たくさんレジはあるものの、解放されているのは2台のみ。後から混んでしまってそこでかち合う可能性は十分にある!
この判断は正しかったはず。
さっさとしてくれレジのおばさん。ドキドキ…念の為、視線はスマホ。Twitterを開くも、内容なんて全然頭に入ってこない。
「なんちゃらVカードお持ちですか?」「持ってません」答えたのに、声がカラっカラで2回も聞き返されてしまう。
「そんなの持ってません!おばさん手が止まってるぅー!いいから、早くしてください」こんなこと気が弱いので言えません。心の中でだけ。
くうー!未スキャンの商品は残りあと半分!
しかし、なぜこんな気持ちになるのか?
ユリちゃんのことが嫌いなわけじゃない。むしろママ友の中じゃ好きな方。サバサバしてるし、綺麗だし、話だってまぁまぁ合うし。
今年もコロナで運動会延期になったね〜とか、PTAのあれ、どうなった?とか、話すことなんていくらでもあるじゃないか。なんなら、同い歳、同じ男児の子供をもつ母同士、深く分かり合えるかもしれないじゃないか!何やってるんだ、わたし!これこそ、友達を作るチャンスじゃないか?変わりたいんだろ?今年は!
ここであったのも何かの縁!この後お茶でも行かない?そこの北欧倶楽部(この地域のスーパーによく併設されてる安いパン屋さん)で、コーヒーでも飲んでかない?これが人生を変えるターニングポイントかもしれない!勇気を持って!
踏み込めば意外と楽しいかもしれない!近所のバローの北欧倶楽部がわたしのターニングポイントでした、つって後々どこかのインタビューで答えるんだ!
よし!わたしも陽キャの仲間入りだー!行くぞっ!
お会計ちょっと待ってもらって、片栗粉を取りに戻って、ユリちゃんを誘うぞ!!
レジのおばさん「お会計、4629円です」
わたし「カードで」
もう大きいものから順番に、とかガン無視。上下左右も関係なし。手当たり次第エコバッグにぶち込んで。あちこちボコボコ飛び出てても、はち切れそうでも、この際何かが漏れてももう関係ない。とにかく早くこの場を去るんだ。安全な駐車場、ラパンの運転席に早く戻りたい。早く会いたい!ハンドルのシンボルマークのうさぎに!
ないない。北欧倶楽部でコーヒーとかまじでない。一生ない。絶対そんなもん緊張で味しない。早く家で一人でブレンディ飲みたい。レジの流れを止めていいわけがない。
そこから車までの道のりはよく覚えていません。
気づけばラパンの運転席。心のセーフティゾーン。
ほーー。よかった。グッバイユリちゃん。
ターニングポイントはまた今度ね。
また今度、がんばります。
追記:チキンソテーは、それなりに美味しくできました。